九州工業大学 大学院 工学府 物質工学専攻 マテリアル工学コース/工学部 マテリアル工学科

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マテリアル工学とは何か

人類社会と材料

 人類にとって有用な材料は,時代の要請や発見によって新たに生み出されるものや,有史以来から利用され,つねに重要な地位を占めてきたものなどがあります。中には,その発見によって時代の流れを変えてしまった材料も存在します。
 最近,新しく生み出されてきた材料として有名なものは,太陽電池やリチウムイオン電池,窒化ガリウムや液晶,等々,機能性材料の分野に数多く登場しています。これらは新しい時代の要請とともに生み出されてきたものです。
 また,後者の例としては,鉄,銅,アルミ,ガラスなど枚挙にいとまがなく,電気,ガス,橋などの社会基盤(インフラストラクチャー)やビルなどの構造物,あるいは自動車,飛行機などの便利な文明の利器,等々,に不可欠なものです。

人類社会と様々な材料
図1 人類社会と様々な材料

 人類社会は常に拡大,進歩を続けていますが,その変化に伴って必要とされる材料の種類や量もどんどん増えています。これは赤ちゃんが生まれて成長していくにつれ,食事の種類や量が大きく変化していく過程によく似ています。すなわち材料とは,成長する人間の骨格や細胞を構成するのに必要な毎日の食事や栄養素のようなものです。

 社会の基盤となる材料や,時代の要請に見合った新しい材料の供給は,人類の日々の活動において不可欠です。もしもこれら材料の供給がストップするようなことがあれば,私たちの生活はすぐに大変な困難に見舞われるであろうことは容易に想像できます。

材料は進化する―驚異の世界

 材料の中には鉄やシリコンのように地球上に豊富に存在するものもあれば,金や白金のように希少なものや,地上に偏在して存在するレアメタルなどがあります。
 わたしたちは,これら有用で貴重な材料を大事に有効に使わなければなりません。そのため,日々,材料は工夫されており,先に述べたように時代とともに日進月歩で進化しています。

 古くからある材料,例えば鉄も,原子・ナノレベルの観点から新たに詳しく調べることによって,思いもよらなかった新発見が次々と起こっており,そこでは常にマテリアル工学の最前線が展開されています。

種々の元素の構造
図2 種々の元素の構造

 また,周期表でよく知られているありふれた原子群も,従来にない新しい組み合わせや配列(結晶構造)で整然と並び変えると,飛躍的な性能の向上や新しい物理現象が発見されることも頻繁に起こっています。

代表的な結晶構造
図3 代表的な結晶構造

  原子同士の組み合わせは無限です。人類は長い歴史の中で,その組み合わせの内の,まだほんのわずかしか明らかにしていません。今後,私たちが知らない飛躍的な性能を持つ新しい材料が,この中から生み出されてくるのは間違いありません。

 マテリアル分野では,驚異的な未知の世界が,つねに私たちの探索を待ち受けていると言っていいでしょう。


図4 さまざまな材料のミクロ組織の電子顕微鏡写真