21世紀に生きる私たちが直面している地球規模での問題として、エネルギー・環境に関する話題がしばしば取り上げられます。これらの問題はお互いに関連しあって資源、エネルギー、食料の不足、さらには地球温暖化などの環境問題を引き起こす可能性があり、早急な解決へのロードマップの策定が世界各国で模索されていますが、各国の利害が対立していてなかなか思うように進んでいないのが現状です。このような複雑な問題を抱える現代社会の基盤(インフラ)を構成するマテリアルの分野でも、エネルギー・環境問題への対応が求められており、有限の化石燃料を高い効率で利用するための耐熱性新材料の開発や、輸送機関の燃費を向上させることで二酸化炭素の排出量を大きく削減する軽量材料の開発などに研究者の努力が注がれています。
たとえば私たちの身近にある車のボディは、現在は非常に薄くて強い高張力鋼板で構成されています。これをもっと軽量のアルミ合金で代替することによって10%をはるかに超える車体重量の軽減が図れるので燃費の飛躍的向上が見込めるのです。しかし、現状では素材のコストや特性の点でまだ鋼板にかなうマテリアルが見つかっていません。そこで、私たちは原子レベルでのコンピュータシミュレーションによる情報を手がかりにして、今よりも格段に優れた性質を有する全く新しい軽量金属材料の開発をめざしています。