ナノ構造解析学研究室

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研究内容

我々の身の回りでは様々な材料が使用されています。例えば、ノートコンピューターを見てみると、中央演算処理装置(CPU)には半導体、ハードディスクには金属、バッテリー(正極)にはセラミックスが用いられています。これらの材料の性質は、構成元素の並び方によって大きく変化します。このため新規機能性材料、構造材料の開発に際しては、構造情報の取得が必要不可欠です。しかしながら、デバイスの高集積化に伴う微細化や機能付加のためのナノへテロ化により、通常の手法では構造情報を得ることが困難となってきております。

透過電子顕微鏡では、高速の電子を試料に入射し、透過してきた電子を用いて構造解析を行います。倍率は100万倍以上に達し、最先端の電子顕微鏡では0.1ナノメーター(100億分の1メートル)以下の空間分解能が実現されています。更に、分析機器を搭載することにより、組成や電子状態等の化学的情報も得ることが出来ます。これらの特徴により、透過電子顕微鏡はナノテクノロジーの分野で欠かすことの出来ないツールのひとつになっています。本研究室では、透過電子顕微鏡法を中心とする実験的手法と分子動力学法やモンテカルロ法等の計算機手法を用いて、以下の研究を国内外のグループと推進し、構造解析を通して「ものづくり」に貢献しています。

アモルファス物質の構造とその結晶化過程

アモルファス物質は太陽電池、半導体デバイスのゲート絶縁膜、高性能モーター等、様々な分野に応用されています。また、アモルファスからの結晶化により、通常の熱処理では得ることが出来ない組織を実現出来ることが報告されています。材料特性および材料創製技術を制御するため、アモルファスの構造および熱処理に伴う構造変化に関する情報が必要不可欠ですが、アモルファスは結晶とは異なり原子の並びに規則性がないため、構造解析が困難です。我々は「電子線動径分布解析」と呼ばれる世界的にユニークな手法を用いて、様々なアモルファス材料の構造解析を行っています。


DVD-RAMやCD-RWに用いられている相変化型記録材料(J. Appl. Phys. 95, 8130 (2004): 98, 034506 (2005): 107, 103507 (2010))。

照射場と材料の相互作用と材料創製に関する研究

原子力産業分野に用いられる構造材料は、高温に加えて照射場という特殊な環境下に曝されるため、材料の信頼性を予測する上で、照射誘起構造変化や原子レベルでの損傷過程に関する情報が求められています。また、イオン照射や電子線照射による材料創製は、平衡状態から離れた原子配列を実現することが出来ます。我々は、照射環境下における構造変化を原子レベルで調べ、得られた知見を基にして耐照射性材料や新規機能性材料の開発を行なっています。


欠陥導入に伴う複合酸化物の不安定化(米国ロスアラモス国立研究所との共同研究:Science 289, 748 (2000))。

新規機能性材料の極微構造解析

量子ドットやナノワイヤーに代表される低次元ナノ構造体はバルクとは異なる物理的性質を示すことから、現在様々な手法で作製が試みられています。また、通常の材料にナノ構造を導入することにより、材料特性を飛躍的に向上させる試みもなされています。この際、原子レベルでの構造情報の取得が求められています。我々は、国内外の材料創製グループと連携して研究を進め、構造と機能化の関係を明らかしています。


ナノロッドを導入した酸化物超伝導体の構造解析(本学マテリアル工学科エネルギー環境材料科学研究室(松本・堀出研究室)との共同研究:Phys. Rev. Mater. 3, 013403 (2019))。

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